転がるままに

2012年9月21日(金)01:03 投稿者 マギー

先月末から、所謂「旅番組」というジャンルの番組が二本続いた。
お仕事で旅ができて、一生会わなかったであろう人たちと出会えて、なんなら美味しいものが食べられて。
なかには過酷なロケもあると聞くが、オレの少ない経験上、楽しい旅ばかりだ。
(あ、むかーしジョビジョバでやった大阪で一日中、道行く人に『ロクタロー』のビデオを売るって企画は肉体的、精神的にもしんどかった・・・。)

一ヶ月、みっちり稽古して観客の前で2時間集中する舞台、一時間のために何日もかけ、カメラの前で一瞬の集中を必要とするテレビドラマ、どちらも大好きなんだけど、
バラエティ番組のライブ感とカメラ回しっぱなし、という状況もこれまた大好きで。
キラキラした照明とセットで一発勝負するスタジオバラエティもいいけど、
いつの間にかカメラがあるのを忘れるくらいのゆるーいロケは、特に好きだ。『タモリ倶楽部』に出させてもらってるおかげだろう。

とくに旅番組では現地の一般の方々と絡むのが面白い。
『タモリ倶楽部』でも、オレの出る回は“なんらかの先生”的な一般の方と絡むことが多いんだけど、
芸人さんたちと絡むのとはまるで違う、ヒリヒリ感のないライブ感、とでも言おうか、そんなんが好きなのだ。

田舎の、特に年配の方は「カメラの前の素人」を演じないからいい。
都会の人はカメラの前で「カメラの前の素人」を演じている。かつて自分が見た「新橋のサラリーマン」や「キャピキャピした女子高生」などを演じている、と思う。
「こんな感じでやるんだよね」という記憶に従い、「こんな感じ」でインタビューに応え、使う側も安易に「こんな感じ」を求めて街に出るから、さらに拍車がかかる。
「政治家にバカヤローって言った後で、おかあちゃん、おこずかいちょうだい!みたいな感じで、お願いします!」
映画観た後の客の「感動しました!」「泣きました!」みたいなコメントが流れる、ありふれたCMもそう。
みんな「こんな感じ」でお願いされて、記憶の中の「こんな感じ」を演じるから、映画も人も違うのに、全部、同じように見える。
だからつまらない。

田舎の年配の方は、「こんな感じ」を持ってカメラの前にいない。
まさかおじいちゃんおばあちゃんが「『ダーツの旅』で観たあの人みたいな感じで・・・」とか「『田舎に泊まろう』で観た親切な人みたいに・・・」とか思ってたら、もう何を信じていいかわからんけど。
作為のない自然体な人と絡むのは楽しい。どう転がるかわからないライブ感、これがハマったときが一番面白い。
(本来、演技もそうあるべきなんだけど、これが難しいのだ)

よく“関西人は一般人も面白い”と言うが、自分も神戸出身者としてはマユツバに思っていた。が、違った。
やっぱり関西人は一般の方も面白かった。
今年の頭の『スパマロット』で、オレがとある理由でお客さんのひとりと絡むシーンがあったんだけど、
東京と比べて大阪公演のお客さんは、圧倒的に面白かった!
これは何故かと自分なりに分析してみた。かつて神戸にいたとき、街のみんなが面白かったわけじゃない。じゃ何故?
これはさっきの話と真逆になるのだが、関西人は「面白い一般人」を演じるのが上手なのだ、という結論に辿り着いた。
関西ローカルの番組には『探偵!ナイトスクープ』を代表とする、芸人さんと素人さんの絡みが面白い番組が昔っからたっくさんある。
子どもの頃からそんな愉快な番組を浴びるように見てきた関西人たちには、「面白い一般人のテキスト」が叩きこまれているのだろう。
そんな方々が「こんな感じ?」と演じる「面白い素人さん」は、もはや自然体の域にまで達している。
だから面白いのだ。という説はどう?
(もちろん、関西人には根っからの“ちょけ”〈調子ノリ〉が多いというのは多分にある)

というわけで。旅番組は楽しいね、という話から転がるままに。
明日はBSジャパン『にっぽん原風景紀行』
10月19日はNHK『日帰りグレートサミット』です。よろしく。

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